小泉首相の靖国神社参拝に抗議する
小泉純一郎首相は、10月17日、靖国神社の秋の例大祭の日を選んで、首相就任後、5回目の靖国神社参拝を強行した。
戦前、靖国神社は、国家神道の中心的存在であり、天皇のために忠義を尽くして戦死した人々を「英霊」として合祀し、国民が侵略戦争によって戦死することを礼賛、美化し、軍国主義を正当化する精神的支柱としての役割を果たした。戦後も、こうした立場から「A級戦犯」を合祀するとともに、アジアで2000万人を超える人々を殺りくし、日本にも300万人の死者をもたらす惨禍を生じさせた侵略戦争を「自存自衛の戦争」「アジア開放の戦争」「正しい戦争」として美化、宣伝するセンターとして機能している。
小泉首相が、その靖国神社への参拝を強行したことは、いかなる口実をもうけ、どのように形を取りつくろっても、平和を求めるわが国のすべての国民、さらには、いわれなき侵略戦争の被害を受けたアジア人民やその諸国政府に敵対するものであり、決して許されることではない。
首相による靖国神社参拝が、日本国憲法の平和主義及び「政教分離の原則」に違反することも、明らかである。日本国憲法は過去の侵略戦争の反省の上に「政府の行為によって再び戦争の惨禍が、起こることのないように決意し」(前文)、戦争と武力の行使を放棄した(9条)。そして、国家と神道の結びつきを断ち切るために、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない(政教分離の原則)と規定している(20条3項)。
靖国神社はまぎれもなく宗教団体であり、参拝は宗教的行為そのものである。国の機関である首相が靖国神社へ参拝することが20条3項(政教分離の原則)に反する憲法違反の行為であることは誰の目にも明らかである。このことはすでに愛媛玉串料最高裁判決、岩手靖国訴訟仙台高裁判決、福岡靖国訴訟福岡地裁判決によって確認されていたが、さらに、本年9月30日の大阪高裁判決で明白に判示されたところである。
私たちは、国の内外の厳しい批判、裁判所の確定判決を無視して繰り返される小泉首相の靖国神社参拝には、日本国憲法の空洞化を加速させようとする意図、ねらいがあるとみざるを得ない。
私たち、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟は、ふたたび戦争と暗黒政治を許さないために日々たたかう団体であり、多くの先覚者の尊い犠牲と運動によって確定した憲法前文と憲法9条の明示する平和主義、憲法の「政教分離の原則」を踏みにじり、憲法尊重擁護義務(99条)にも違反し、アジア諸国民との信頼関係を破壊する小泉首相の靖国神社参拝を断じて許すことはできない。
よって、首相の靖国神社参拝に激しい怒りをもって、強く抗議するものである。
2005年10月22日
治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟
和 歌 山 県 本 部 常 任 理 事 会